2013年10月25日金曜日

[思い出のフライト1の続き] 興奮しまくった初めてのソロフライト (My first solo flight) 後編

前編はこちらをどうぞ!
昔:ソロフライトを成功させたBC州デルタ市にある
バウンダリーベイ空港 (CZBB)
今:2010年のバンクーバーオリンピックのお陰で
こんなに見違えるように綺麗な空港になりました!
航空身体検査を無事にパスして一つ飛行機乗りとして近づいた僕は、次なる試験に向かいました。それは無線通信士の試験です。英語ができない当時の僕にとってはこれもなかなか難関でした。航空無線は基本は英語を使って通信しますが通常会話の英語ではありません。英単語などを並べてより簡潔に相手に伝えます。

例えば離陸前に管制官に離陸の許可をもらいますが、もし飛行機の名前がCGQPという名前であれば、
”〇〇Tower, this is CGQP. I am waiting for take-off in front of runway 24. Please give me a clearance for take-off.”「〇〇管制、こちらはCGQP。今ランウェイ24の前で離陸のため待機しています。離陸の許可をください。」というのを「〇〇Tower, CGQP ready for take-off runway 24」という簡潔したもので離陸の許可をもらいます。

またフェネティックコードといって無線通話などにおいて重要な文字・数字の組み合わせを正確に伝達するためのもので、例えばTであれば「ティー」と言わずに「タンゴ」といいます。ティーだとP「ピー」やB「ビー」に聞こえる場合があるので誤聞を防ぐためにこのフェネティックコードを使用します。Pはちなみに「パパ」、Bは「ブラボー」といいいます。上記の飛行機の名前だと「チャーリー、ゴルフ、クベック(ケベック)、パパ」となります。9も「ナイン」と言わずに「ナイナー」と言ったりします。無線のライセンスを持っていなくても例えば旅行会社の人ならこれを知っている人は沢山いらっしゃいますね。その他SOS、Maydayコールなど勉強することが山ほどありました。

そしてもう一つの試験がPSTARです。Pre-Solo Test of Air Regulationsの略ですが主に航空法規についての試験で、空のルールをまず知っていないと一人では飛べないよということで、このテストは50問あって90%以上正解がないとパスできません。これらをパスして初めて一人で飛べる資格を得ます。

また身体検査、筆記試験の他にもちろん飛行機操縦のチェックもあります。訓練の初めのころはインストラクターとエアエクササイズを集中して訓練しますが、ソロの前になるとサーキットトレーニングといって、空港の周りをぐるぐる飛んで着陸しては離陸してまた着陸しては離陸といった離着陸の訓練を繰り返します。一人で飛んで戻ってくるにはこの離着陸なしではありえませんからね。これも最初はインストラクターと共に操縦桿を握ってその技量を自分の物にしていき次第に一人でやれるようになっていきます。操縦しながら管制とやり取りして自分の居場所を伝え自分が何番目に着陸できるかを把握して、着陸前に全ての機器などが正常に作動しているかコックピット内でチェックをします。初めのころはこのいろんな作業で頭が混乱したのを覚えています。

様々な試験をパスして、このサーキット訓練を何日か繰り返していたある日、とうとう一人で飛ぶ日がやって来ました。インストラクターとまずは一緒に飛んで3回自分ひとりだけで離着陸が問題なくできれば、一回降りて駐機場でインストラクターを降ろし、また離陸に向けて今度は一人だけで出発するというのがソロフライト前のルールでした。

僕は問題なく3回自分だけの力で離着陸をすることに成功し、インストラクターを降ろし一人だけでまた滑走路に向かいました。その日の天候はあまり良いとはいえませんでしたが、風はそんなにきつい日ではありませんでした。右隣にいつも座っていたインストラクターはいません。僕は誰もいない席を手で触れその空間を手でぐるぐる回して、「誰もおらん!俺だけやで! マジで!やばいやばい!」とすでに興奮してました。
サーキットパターン例
滑走路はランウェイ12。南東から風が穏やかに吹いていました。横風はほとんどなかったと思います。管制に離陸の許可をもらって風に向かって飛ぶ鳥と同じく、その穏やかな風に向かって一人で飛び立ちました(Upwind)。空港の標高から500フィート(約152m)辺りでいつも目印としている山頂を目視して上昇しながら左方向へ90度旋回します(Crosswind)。更に500フィート上がる前にまた左に90度旋回してサーキットの高度に到達(Downwind)。左下を見るとさっき自分がいた滑走路が見えます。滑走路に並行して今度は追い風の中を飛行するためあっという間に次の旋回ポイントに近づきます。

でもこのDownwindを飛行中に管制に連絡して自分の居場所と着陸の意思を伝え、着陸のチェック項目を素早く行わなければなりません。チェックし終わった後はすぐさま着陸のため飛行機を操作をします。スロットルを絞りトリムタブを3回下に回し左に旋回。管制にもう一度コンタクト。速度計を確認し操縦桿を引き機首を少し上げて着陸速度に合わせていきます。この時はフラップ(高揚力装置)は使わずノーマルで降りていきました。

左前に見える滑走路へまっすぐに入れるようまた左に下降旋回し速度を確認しながらファイナルレグに入っていきます。ファイナルレグでもう一度管制にコンタクトして着陸の許可をもらいます。許可がもらえなければそのまま着陸せずにゴーアラウンド。もう一度サーキットを回って着陸しなければなりません。許可を無事にもらえたら後は着陸するのみです。12と滑走路に大きく描かれた数字の少し先を着陸ポイント(接点)としました。速度を維持しながら機体を操縦桿とラダーペダルで水平に保ちどんどん降りていきます。着陸ポイントまでであと少し。機首を上げてフレアというのをかけます。失速に近いくらいまで機首を上げてふわりと着陸。見事着陸成功!

仲間はもちろんのことホストファミリーもわざわざ僕のファーストソロフライトを見届けるため空港まで来てくれていました。着陸した瞬間僕は飛行機の窓を開けて彼らに向かって叫んでやりました。「やったぞー!着陸したぞー!I did it!」って。それでそのまま滑走路を走ってスロットルを全開にして再びカナダの空へ飛び立っていきました。もう一度サーキットを行うためです。今度は上空で窓を開けて窓から顔を半分だして下に向かって叫びました。「最高!俺一人で飛んでるでー!よっしゃー!」って。これ読んだ人はなにやってんの!危ないしそんなやったらあかんやろ!と突っ込まれそうですが、興奮してやっちゃいました。。(まぁそれくらい余裕があるほど上達したのでした。低い高度なので窓を開けても全然問題ありません。万が一機体が制御不能となった場合、ドアを開けたりして機体を制御するという荒技があるくらいです。実際飛行中左のドアを開けるとヨー(横向き)の動きが生まれます。)

さらにもう一回計3回程サーキットをやって無事に駐機場まで戻ってきました。エンジンをとめて飛行機を駐機し、皆が待ってくれているターミナル横のピクニックテーブルへ。皆バケツいっぱいの水やホースの水を思いっきり僕に向かって掛け初ソロフライトの成功を祝ってくれました。カナダではソロフライトを無事に終えたパイロットに水をかけるというのが儀式になっています。僕はそのことを知っていたのでなんと実は水着で空を飛んだのでした。もちろん上半身はTシャツを着てましたよ。

びしょびしょに濡れた体でホストマザーに「ハグ!ハグ!」といって近寄りましたが案の定逃げられました。。皆にありがとう!と御礼を言って拍手の中びしょ濡れで無事に初ソロフライトを終えたのでした。忘れられないフライト、忘れられない最高の一日となりました。

また長々と書いてしまいましたが、このような心に残る「思い出のフライト」をまた書きたいと思います!それではまた!

ありがとうございます。

次回は、4. [思い出のフライト2] 絶体絶命、ホワイトアウト!?恐怖のナイトフライト 前編です!

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